「ねぇ……あんたさ、一体なにしに来たの?」
「ん〜……」
「聞いてないわけね……」

この暑い季節、冷房の効いた部屋に男が二人。
一人はこの部屋の住人で先ほど話し掛けたのも、この若い男。
実年齢よりも幼く見える、その顔は呆れの色が浮かんでいる。
最新型のパソコンが置かれた机に片肘をつき、片方の腕を椅子の背凭れに乗せて、自分の背後にいる男を見ていた。
その視線の先には、一人で寝るには充分過ぎる程の大きさをしたベッドに座っている男の背中。
こちらの男も若く、もう一人の男からは見えない顔は綺麗な顔をしており、髪も明るく柔らかで、長い。
「恋人の部屋に来といて、その態度はないんじゃない?」
恋人のところにアクセントをつけてみても、返ってくるのは生返事ばかりで、男にしたらつまらない事この上ない。
椅子から立ち上がり、ベッドの淵に座って、後ろから男の見ているものを一緒に見てみる。
TV画面に映るそれは、昼と夕方の間に流れる再放送の番組で、お世辞にも面白いとは言えない。
「……これのどこが面白いの?」
「面白いよ」
初めて、返事らしい返事が返って来たが、面白いと言う割に声に感情が込もっていない。
変に思った男は、背を向ける男の方に体を向けて座り直すと、男の両肩に手をかけ、自分の方に勢いよく倒す。
「うわっ!?」
倒された男の顔を見ると、驚きのそれとは別に、頬が赤く色付いていた。
「なに赤くなってんの。さっきのTVにラブシーンなんてなかったのに」
男は面白い物を見つけた子供のように笑って、赤い頬を軽くつねる。
「び、びっくりしたんだよ!ったく、人がテレビ見てたのに……」
男の手を退けて、起き上がり、またテレビに向かう。
「ふーん……」
傍に置いてあったリモコンを取って、電源をOFFにするとプツンッと音と立てて、テレビの画面が暗くなった。
「あっ!淳!」
「いーじゃん。どーせ、見てなかったくせに」
淳と呼ばれた男がプイッと顔を逸らして、リモコンをベッドの端の方ヘと投げる。
「み、見てた!」
「じゃあ、どんな番組だった?」
「えっ!?そ、それは……」
尚も見ていたと言い張る男に、淳が指摘すると、たちまちモゴモゴと口篭もる。
「ほら、見てない。嘘吐きは閻魔様に舌、抜かれるよ?真司」
勝ち誇ったようにニヤリと笑いながら、真司と呼んだ男の唇に人差し指で触れた。
「ま、どっちでもいいけどね」
真っ赤になる真司に満足したのか唇から指を離すと、すっと顔を寄せる。
「あんなつまんないの見るより、俺ともっと愉しいことしよ。ね?」
「…………こうなるからテレビ見てたのに」
「嫌じゃないくせに、よく言うよ」
顔が近寄る中、真司が目を閉じるのを確認した後、淳は自分も目を閉じ、唇を重ねた。
「ん……嫌じゃないけど」
「けど、なに?」
真司の体を仰向けに倒れさせて、またキスをする。
「その、恥ずかしいって言うか」
「はぁ?なに今更な事言ってんの?いい加減、慣れなよ」
「慣れないんだから、しょうがないだろ!!」
呆れたように言う淳に、文句を言って、起き上がろうとするが淳の手が肩を押さえて、そうさせてくれない。
「でも慣れたら、慣れたでつまんないから、別に良いけどね」
「あのなぁ……」
分かってはいたが、楽しければそれで良いと言う淳の性格に、今度は真司が呆れる番だった。
「それじゃあ、いっぱい恥らってもらおうかな」
「へ?ちょっ!……んん…」
深い口付けを受けながら、ぼやける頭で真司は思った。
(オモチャにされてるって言うか、舐められてるって言うか……)
目の前の淳の顔を見ながら、それでも良いかと思う自分がいることに真司は苦笑する。
(淳になら、何されてもいいと思ってるなんて……随分、惚れてるんだなぁ…俺)
それは、まだ暑さも半ば、8月の日の午後の出来事。



【END】



リクエストは、どちらかがどちらかを、もしくはお互いに甘やかせる話だったんですが……
甘やかせられる関係ってことで、恋人同士になってます。
実はこの話、先日UPした淳真の絵を描いてて思い付いた話なので、イメージ的にはあのままです。
で、書いてる最中、思ったんです……どこまでOKなのかな?って(おい)
淳っち相手だと、エッチィくなってくんですよね(苦笑)でも私のサイト、裏ないんで。

淳っちと言えばパソコンなんですが、パソの写真が見つからなかったので、フロッピーを使ってみましたv

胡麻さん。5000HITありがとうございました!


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